お気楽Girl! 第三話 グループ行動!

 

今日から本格的に授業が開始となった詠佳達が通う星雲高校、詠佳達のいる1-BではHR(ホームルーム)が行われていた。

「え〜、ではこれから5人1グループとなって1年間過ごしてもらう」

「先生〜、何で今更小学生みたいな事するんですか〜?」

ある生徒が担任の駒田の提案に対し、挙手をして質問する。

「そうだなぁ〜、君達にはグループ行動を通して、同じグループでのチームワークや連帯責任を学んで欲しいからかな、社会ではグループでの行動をする機会が多いからね」

「分かりました、ありがとうございます先生」

駒田の返答に、その生徒は納得した様子を見せた。

「グループでの行動か〜、雪恵ちゃんと柚希ちゃんと同じグループになるといいな〜」

どこかワクワクした様子の詠佳。それを見た雪恵と柚希は、

「詠佳ちゃんらしいわね、でもそういう私も詠佳ちゃんや柚希ちゃんといった知っている人達と一緒の方がいいかも」

「あたしも雪恵ちゃんと同じ考えね、だけど仮にあたし達3人が一緒だったとしても、残りの2人はあまり顔なじみの無い人になるってことよね」

確かに柚希の言うとおり、1グループ5人となっているため、もし詠佳、雪恵、柚希の3人が一緒のグループであったとしても、あとの2人に関しては、会ったばかりのあまり知らない人になるということになる。

「あまり癖が強い人に当たらなければいいけど・・・」

これ以上詠佳のような癖の強い人に当たらない事を不安げながらも祈る柚希。

「お、グループ決めが始まるみたいだよ〜」

そして、運命(?)のグループ決めが始まった。

 

数分後、全てのグループ決めが終わった。1-Bのクラスの人数は35人のため、全部で7グループとなった。

その後、グループ決めに教壇へと行っていた詠佳が雪恵と柚希の元へとやってくる。詠佳は嬉しそうな表情をしていた。

「どうだった雪恵ちゃん?」

その表情を見て、良い予感をしつつ、詠佳からグループ決めの結果を聞く雪恵。

「えへへ〜、何と、私達一緒のグループになったよ〜」

なんと詠佳はグループ決めで、自分と雪恵と柚希が一緒のグループに決めたのであった。

「よかったぁ〜、1年間ずっと一緒だね詠佳ちゃん」

「うん!私もすっごく良かったと思ってるよ〜」

「ホントだよ〜、決まったグループのメンバーが、あたしの知らない人達ばかりだと不安だったしね」

同じグループのメンバーになれた事を喜び合う3人。

「ところで、あと2人のメンバーは?」

「それは、席を移動してから分かると思うよ、私だって名前見た位で誰なのか全然分かんないし」

「そりゃそうよね・・・」

残りの2人のメンバーについては、詠佳は名前だけしか見ていないので、実際にどういう人物なのかは彼女自身も知らない。

「では、グループごとに席を移動して下さい〜」

駒田の指示で、1-Bの生徒達は、それぞれ決められたグループ毎に集まる形で席を移動し始めた。

数分後、生徒達の席の移動が完全に終わった。それを見計らって、駒田が生徒達に次の指示を出す。

「それでは次に、グループ内のメンバーの顔と名前を覚える為に自己紹介を始めて下さい」

駒田はグループのメンバー同士で自己紹介を始める様に指示を出した。

「と言うか、あたし達3人に対しては、自己紹介はいいよね、顔も知ってるわけだし」

「そうね、それじゃあ私達以外の2人に・・・」

「改めて初めまして、私は鷺宮 詠佳って言います、これから1年間よろしくね〜」

雪恵が話し終える前に詠佳が二人に対して自己紹介をする。雪恵と柚希は詠佳の行動に「えっ?」とした表情で驚いた。

「あの、詠佳ちゃん・・・、わざわざ知っている私達に自己紹介をしなくても・・・」

「一応しといた方がいいかな〜って」

頭を掻きながら、ニコニコした表情で話す詠佳。

「何あたし達に初対面のフリしてるのよ、そんなボケかましてる暇があるんなら顔なじみのない2人に自己紹介しなさいよ」

「ほ〜い」

詠佳の能天気っぷりに呆れながらも、ツッコミを入れる柚希。一方の詠佳はまだ会って間もない同じグループメンバーの2人の方へと顔を向けた。

「お〜、まずは一人目」

まず詠佳は、紺色の髪でポニーテールの女子に向かって自己紹介をしようとした瞬間、その女子の目が一瞬光ったかの様に見え、その直後、その女子が詠佳の方に向け身を乗り出した。

「おぉ!?」

流石の詠佳もこれには驚いた。

「あんた、さっきのやり取りを聞いてたけど、結構面白そうな人ね、ウチそういう人好きなんだ」

「面白そうな人って言ってありがとう〜、で、君の名前は〜?」

「あ、ウチ?ウチは荻原 香織(おぎはら かおり)、香織でいいよ。それからウチは面白い事とお笑いが好きって事を覚えといてね」

詠佳とはまた違ったハイテンションな女子は荻原 香織、面白いこととお笑いが好きだという彼女だが、自ら面白い事を探しだそうとする位、面白い事に対する探求心はかなりのもの。しかも彼女は、神出鬼没のスキルも持ち合わせており、突然と姿を現しては、驚かせているほど。これもまた面白い事の探求心からであると思われる。

「うん、覚えておくよ〜。それじゃ今度はこっちだね、えっと私は鷺宮 詠佳、フルネームで呼ぶの面倒だと思うから、香織ちゃんの呼びやすい呼び方でいいよ」

香織の自己紹介が終わったところで、今度は詠佳が香織に自己紹介をする。詠佳から自分の好きな様に名前の呼び方をしていいと、詠佳自身から言われた香織は、少し考え込んだ後、香織はこう決めた。

「そうだね〜、ここは普通に“詠佳”でいいかな、あまり変なあだ名付けるとかえって覚えられそうにないしね」

「じゃあこれからよろしくね香織ちゃん」

「こっちもこれからよろしくね、詠佳」

お互い笑顔で握手をし、すっかり意気投合した様子の詠佳と香織であった。

 

一方、雪恵と柚希は、メンバーの最後の一人に自己紹介をしようとしていた。

「あの〜・・・、私、或羽 雪恵と言います、あなたと同じグループのメンバーなので、自己紹介に参りました・・・」

「・・・・・・」

雪恵は、その少女に対して若干遠慮気味に自己紹介をするが、その少女は、雪恵の方へは振り向こうとはしなかった。

「折角1年間同じグループなんだし、みんなと話した方が・・・」

「・・・・・・」

「あ〜、もうっ!折角あたし達が自己紹介しようとしてるって言うのにシカトしないでくれるかしら!」

少女の無反応振りに痺れを切らした柚希が思わず大声で少女に言い放つ。するとクラスの生徒達は何事かと思わんばかりに柚希達3人の方に注目する。

「柚希ちゃん、ちょっと声が大きいよ〜、クラスの人達みんなが私達の見てて私恥ずかしいよ〜」

赤面しながら柚希に訴えかける雪恵、しかし柚希はその事には気付いていない様であった。するとようやく少女は雪恵と柚希の方へ振り向くなりこう言いだした。

「あのさ、そんな大声で私に話しかけないでくれるかしら・・・、迷惑だから・・・」

しかもその少女の表情は、いかにも不機嫌そうな表情をしていた。

「あんたねぇ・・・、散々無視した癖に言わせておけば〜・・・」

「柚希ちゃん、落ち着いて〜!」

今にも暴れ出しそうな柚希を、必死に抱きついて制止させる雪恵。

「柚希ちゃん、気持ちは何となく分かるけど、落ち着こう、ね!」

「う、うん、ちょっとイラ立ってたわ・・・、少し冷静になろう・・・」

柚希は大きな深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

「ところで本題なんだけど、あなたの名前は何て言うのかしら?」

雪恵は改めて少女に、名前を聞こうとする。

「私は風花 瑠香(かざはな るか)・・・、これでよかったかしら・・・?」

ショートボブでモスグリーンの髪色をした少女は風花 瑠香、時間に正確で、それ故に神経質であり、またいつも不機嫌そうな表情をしている為か、あまり友達がいないのである。

(なんっか、可愛くない性格ねこの子)

不機嫌そうな表情のまま自己紹介をする瑠香。柚希は瑠香のことを性格的な面で可愛くない奴と内心思っていた。すると柚希が瑠香のある事に気が付いた。

「そういや今瑠香ちゃんを見て思ったけど、随分小柄だったんだね」

瑠香は、柚希や雪恵と比べると、高校生とは思えない様な小柄な体格であった。

「私が小さいからって何よ・・・、別にあなた達に悪い事ではないでしょ・・・!」

「いや、確かにそうなんだけど、言い方ってのがあるじゃない?」

相変わらず不機嫌そうな表情のままの瑠香。

「そう・・・?で、用件はそれだけ?無いなら私に話しかけないでくれるかしら?時間の無駄だから・・・」

「ちょ、ちょっと待ってよ、まだあたしの自己紹介が終わって無いって!」

瑠香は早々に雪恵と柚希との話を切り上げたい様子だ。柚希は瑠香の様子を見て、焦りながらも自己紹介をする。

「あ、あたしは沢嶋 柚希、1年間同じグループだからよろしく〜」

「或羽さんに沢嶋さんね・・・、一応覚えておくわ・・・。じゃあ私はこの先の授業の予習するから邪魔しないでよね・・・」

「えぇ、分かったわ」

雪恵と柚希は瑠香と言うとおりに彼女の元から離れようとするが、そこにあの2人がやってきた。

「随分暗そうな顔してるね〜、そんな顔してると幸せが逃げちゃうよ〜」

「君が私達と同じグループのメンバーなんだよね?」

突然と現れたのは、詠佳と香織であった。2人のあまりのテンションの高さに瑠香はもちろんの事、丁度居合わせていた雪恵と柚希も驚いていた。

「余計なお世話よ・・・、それにあなた達は誰?」

雪恵と柚希と話していた時よりも、更に不機嫌な表情になって詠佳と香織に話す瑠香。

「そ〜だったね、私は鷺宮 詠佳、君と同じグループのメンバーだよ」

「ウチは荻原 香織、そういやさっき聞き忘れたけど、あんたの名前は?」

「私は風花 瑠香、私はあなた達みたいな人、あまり好きじゃないから・・・」

お互いに自己紹介をしたものの、瑠香は詠佳と香織(特に香織)のハイテンション振りに嫌気をさしている様だ。

「またまた〜、折角こんなにちっこくて可愛らしいのに、そんな不機嫌そうな顔をしてたらもったいないって〜、ほらスマイルスマイル」

香織自身は褒めているのかどうか分からないが、今の香織の発言を聞いた瑠香はピクっと反応した。

「香織ちゃん、それ褒めてるの〜?」

「さぁ?」

「その様子だと、やっぱりそうみたいだね」

珍しく能天気な詠佳が香織に対してツッコミを入れる。

「・・・いい加減にしてよ」

「ん?瑠香ちゃん何か言った?」

「いい加減にしてよっ!私のこと小さい小さいって、みんなもう私に話しかけないでっ!!」

香織の言葉が瑠香の怒りに触れた様で、瑠香は香織達に向かって怒鳴り声を上げる。それに彼女の目には涙を浮かべていた。

「ウチ、そういうつもりで言ったんじゃ無かったんだけどなぁ・・・」

「ほら二人共、ここは瑠香の事考えて、ここから離れよ」

「うん、そうしよう〜」

柚希は、詠佳と香織に瑠香から離れる様に促し、2人は柚希と共に瑠香から離れていった。

 

* * *

 

「う〜ん、ひょっとしたら瑠香ちゃん、詠佳ちゃんよりも厄介な子かもしれないわね」

「それは分かる気がするかも〜」

馴れ馴れしく香織が柚希の話に加わっているのを見て、柚希はふと気付く。

「って言うか、あんた誰なのよ?」

「そういえば私も、まだあなたの事については良く知らないのですが」

実はまだ柚希と雪恵は、香織のことを知らなかったのだ。

「何かさっきの事があってウチもすっかり忘れてたけど、ウチは荻原 香織、これからあんた達と同じグループのメンバーだからよろしくね。と、そういうウチもあんた達の事よく知らないから、自己紹介してもらっていいかな?」

柚希と雪恵が香織のことを知らなければ、当然、香織も柚希と雪恵のことは知らないのである。

「あたしは沢嶋 柚希、そしてあたしの隣にいる緑色の髪で、メガネを掛けた子は或羽 雪恵って言うの」

「これからよろしくね、香織ちゃん」

「お〜、これからよろしくね柚希、雪恵。それで本題に戻るけど、瑠香についてどうしたらいいと思う〜?」

瑠香を除いたグループのメンバー4人は、机を向かい合う様にして並べ、同じグループのメンバーである瑠香についてどうするか話し合っていた。

「ウチ的には、瑠香の不機嫌そうな表情を治す為にも、何かしらの方法で瑠香を笑わせられるようにすればいいと思ってるんだけど、こういうのはウチが適任かと」

「さっきのあんたの行動からじゃ、思いっきり逆効果だったじゃない!」

「そういやそうでした〜」

テヘッっとした顔で言う香織。彼女自身はあまり自覚してないようだが、瑠香を怒らせた張本人である。

「それに、瑠香ちゃん、ただ怒ってるんじゃなくて、目に涙浮かべてた位だから、私が思う限り、さっきの香織ちゃんの言った事は、よっぽど触れられたくなかったんじゃないかな〜?」

詠佳は、さっきの瑠香の様子をしっかりと見ていた様で、憶測ながらも、詠佳は瑠香の心境をこう推理した。いつもの能天気キャラと思えない推理力ぶりであった。

「恐らくだけど、詠佳ちゃんの言うとおりかもしれないね」

雪恵も詠佳のさきほどの言った事には、納得の様子を見せる。

「じゃあ、どうしたら瑠香ちゃんはあたし達に心を開いてくれるのかしら・・・」

「ここはやっぱウチが・・・」

「あんたじゃ絶対に無理!余計関係を悪化させるだけよ」

妙に出しゃばる香織にキツめにツッコミを入れる柚希。

「うん、香織ちゃんはしない方がいいと私は思うよ〜・・・」

詠佳も、香織の出しゃばりっぷりに、若干引いてる様子だった。

「そっか〜、詠佳ちゃんにまで言われたなら仕方ないか〜」

「何よそれ、しかも何で詠佳ちゃんなの・・・」

香織の行動にも、気苦労が絶える様子のない柚希。すると雪恵が柚希達にこんな提案を出した。

「ねぇみんな、私に考えがあるんだけど、いいかな?」

「うん、雪恵ちゃん何か良い考え見つかったの?」

「ええ、でもこの事は放課後に私一人でやりたいんだけど、ダメかな・・・?」

どうやら雪恵は瑠香と打ち解けるための方法はある様なのだが、何故か放課後で雪恵一人でやりたいと言い出した。これを聞いた詠佳達は若干戸惑いを見せたものの、すぐに彼女達は答えを出した。

「私はいいよ〜、雪恵ちゃんのこと信じてるから」

「あたしも詠佳ちゃんと同じかな・・・」

「多分だけど、雪恵の優しそうな感じが、瑠香の心も開いてくれるよ!」

詠佳達は雪恵の提案に反対する様子も無く、笑顔でその提案に賛成した。

「ありがとう、瑠香ちゃんと打ち解けられる様に頑張るからね!」

雪恵は笑顔でガッツポーズをした。

「うんうん、あ!そういや先生からグループのリーダー決める様に言われてたの忘れてた!」

「詠歌ちゃん!何で決めなきゃいけない事を忘れてるのさー!」

実は駒田からグループリーダーを決めなきゃいけない事を言われていた詠佳だが、その事をすっかり忘れていたようであり、今になってようやく思い出した様だ。

「鷺宮さんのグループのリーダーは決まったのですか?リーダーが決まってないグループは君達のグループだけだぞ」

「すいませんっ!今すぐ決めますからっ!」

他のグループは、既にグループリーダーが決まっている様で、まだ決まっていない詠佳達のグループは慌ててリーダーを決めることとなった。

 

* * *

 

結局、詠佳達のグループのリーダーは、焦って話し合った末、一番まともそうな柚希がリーダーに決まった。決まった柚希は、自分がリーダーである事を恥じらい、顔を赤面していたが、雪恵がリーダーの補佐役になると聞いて、ホッとした様子であった。

そしてその後は普通に授業を受け、帰りのHRに差し掛かった頃、瑠香は心の中でこう呟いていた。

(またやっちゃったよぉ・・・、折角鷺宮さんたちが私に話掛けてくれたって言うのに、私ったら・・・)

瑠香はさっきの詠佳たちに怒った事を後悔している様だ。

(何でこういつも素直になれないんだろう・・・、素直になろうって、いつも意識しているのに、いざ話掛けられた時は、私が思っている事と反対の事をしてしまう・・・)

実は、瑠香の本心はというと、詠佳達と仲良くなりたいのだが、自分に素直になれず、つい思っている事と反対の事を言ってしまう。瑠香はその自分の短所に思い悩んでいた。

(確かに背が小さいことは気にしてるけど、荻原さんが言う様に、背が小さいのって可愛らしいことなのかなぁ・・・)

(そうだ、明日にでも鷺宮さんたちに謝りに行こう・・・、でも私の事だから、ちゃんと謝れるかなぁ・・・)

瑠香は翌日、自己紹介の時に詠佳たちに怒鳴ってしまった事を謝りに行こうと思っているのだが、また思っている事と反対の事を行ってしまわないかと不安になっていた。

 

そして帰りのHRが終わり、瑠香は席を立ち上がり、教室から出ようと歩き出そうとした瞬間、後ろから誰かに声を掛けられた。

「瑠香ちゃん、今、時間空いてるかな?」

「えっ!?」

突然話掛けられた事に驚く瑠香、話掛けた相手は、同じグループメンバーの雪恵だった。

「ま、まぁ・・・、とりあえずは時間は空いてるわ・・・、それで、私に何か用?」

「ええ、2人っきりで話でもしようかな〜って思っていたの、いいかな瑠香ちゃん?」

「・・・うん」

雪恵は瑠香と2人で話し合いたいと思っていた、瑠香は笑顔で言う雪恵に思わず頷く瑠香。

「良かったぁ〜、じゃあここじゃ話し辛いかと思うから、屋上に行って話しましょうか」

そう言って雪恵は、瑠香を連れて校舎の屋上へと向かった。

 

星雲高校の校舎の屋上へとやって来た雪恵と瑠香。空はオレンジ色の夕日に染まり始めていた頃だった。

「何で或羽さん、屋上に行けるの知ってるの・・・?」

何故雪恵が校舎の屋上の行き方を知っているのかを聞く瑠香。それに対して雪恵はこう答えた。

「それはね、前に詠佳ちゃんが駒田先生に屋上の行き方を聞いたらしくて、私はその事を聞いた詠佳ちゃんから教えてもらっただけなんだけどね」

雪恵が屋上の行き方を知っていたのは、行き方を聞いた詠佳から教えてもらっただけであった。因みに星雲高校の校舎の屋上は、基本的に開放されており、昼休みには生徒達の憩いの場的な場所である。

「それで、私と話したい事って?」

「そうだったね、私ね、瑠香ちゃんと仲良くしたいなって思っているの、瑠香ちゃんは嫌だと思っているのかもしれないけど、私だけじゃなくて、詠佳ちゃんも、柚希ちゃんも、香織ちゃんも、瑠香ちゃんと仲良くしたいと思っているの。それに私思うんだけど、ホントは瑠香ちゃんも私達と仲良くしたいと思っているんじゃないんかしら?」

(どうして或羽さんは、私の思っている事を分かったんだろう・・・)

自分の思っていた事を言い当てた雪恵に驚く瑠香、雪恵は笑顔のままであった。

「う、うん・・・、確かに私は或羽さんたちと仲良くなりたいと思っているわ・・・、でも・・・」

「でも?」

「でも私、或羽さんたちに怒鳴りつけちゃったし・・・、それに私自身中々素直になれなくて、思っていた事の反対のこと言っちゃうし・・・」

雪恵の優しさに、思わず涙ぐみながら本音を漏らす瑠香。彼女にとって雪恵は、いつしか心の許せる存在へとなっていた。

「やっぱりそうだったんだね、誰だって素直になれなくてつい思っている事と反対の事を言ってしまう事だってあるわ、私だって詠佳ちゃんと会ったばかりの時は、上手く話せなくて後悔したことだってあったもの、まぁ、詠佳ちゃんがあんな感じの子だったから、打ち解けるまで早かったんだけどね」

雪恵もまた、詠佳と会ったばかりの頃は、今の瑠香と似たような境遇であった事を瑠香に打ち明けた。

「或羽さんも私と同じような経験をしていたんだ・・・」

「だから、今すぐは中々出来ないから、少しずつでも私達と仲良くしていきましょ、ということで、これからもよろしくね、瑠香ちゃん」

笑顔で瑠香に向かって手を差し伸べる雪恵、それを見た瑠香は、溢れんばかりに大粒の涙を流し始めた。

「ありがとう、或羽さん・・・、私、こんなに優しくしてもらったの始めてで・・・、それがとっても嬉しくて・・・」

泣きながらも、差し伸べた雪恵の手に握手をする瑠香、その表情は、いつもの不機嫌そうなものではなく、満面な笑顔であった。

「今まで寂しかったんだね・・・、大丈夫、今度は私達がいるからね。それと、私の事、雪恵でいいからね」

「うん・・・、本当にありがとう、雪恵ちゃん!」

雪恵は瑠香が泣き止むまでその場から離れる事無く、ずっと瑠香のそばに居続けた。そして、ようやく瑠香が泣き止み、2人は屋上を後にした。

「それじゃあ、私の家はこっちだから、また明日学校でね」

「うん、また明日ね、雪恵ちゃん」

お互い笑顔で手を振ってそれぞれの家路へとつく雪恵と瑠香であった。

 

* * *

 

そして翌日、瑠香は雪恵と一緒に、詠佳、柚希、香織の元へとやって来ていた。

「あの・・・、昨日のことなんだけど・・・、みんなと協力もしないで、怒鳴っちゃって・・・、その・・・、ごめんなさい・・・」

いつもの不機嫌そうな表情ではあるが、詠佳、柚希、香織に謝罪をする瑠香。すると、3人は笑顔で瑠香にこう答えた。

「私は全然気にしてないよ〜、私達もちょっと強引なとこあったしね〜」

「あたしは最初、小憎たらしい奴だなって思ってたけど、ちゃんと素直なとこもあるじゃない、あたしも瑠香ちゃんに思わず怒っちゃったから、お互い様かな」

「ま、ウチも調子に乗り過ぎて、瑠香の気に障る様なこと言っちゃったから、そこはごめんね」

3人もそれぞれ瑠香に対して、昨日の事を謝っていた。

「その・・・、勘違いしないで、まだあなた達の事、完全に気を許した訳じゃないから・・・(も〜、何言ってるのよ私〜!)」

顔を赤面させ、妙な意地を張る瑠香。それを見ていた雪恵はやれやれといった表情をしていた。

「あ、それっていわゆるツンデレってやつでしょ、ウチ始めて見たよ!」

「ひゃあ!」

突然目の前に飛び出してきた香織に驚き、瑠香は思わず近くにいた雪恵の後ろに、雪恵にしがみつく様に身を隠す。

「うぅ〜、私、荻原さんだけは苦手・・・」

どうやら香織は、瑠香に苦手意識を持たれてしまったようだ。

「ありゃりゃ、苦手意識持たれちゃったか・・・」

「そりゃそうなるだろうね」

「あはは・・・」

香織の行動に、呆れ気味の柚希に、苦笑いをする雪恵。

「これでやっとこのグループも一つになれたね〜」

「そうね、そう言われるとあたしがグループのリーダーだからしっかりしないといけないとね、あぁ、ちゃんとリーダー務まるかなあたし・・・」

自分がグループのリーダーである事に緊張している様子の柚希。

「よ〜し、これからこのグループで頑張っていこ〜」

右手をグーにし、天へと突き出す詠佳。

「・・・今思ったけど、それって鷺宮さんじゃなくて、リーダーがやる事だと思うけど・・・」

「あ、そっか〜」

「まぁまぁ瑠香ちゃん、その辺は好きにやらせてあげましょ」

「まぁ・・・、雪恵ちゃんの言うとおりかもね・・・」

ようやく詠佳達のグループが一つになり、まずは一段落。そして、部活動紹介が間も無く始まろうとしているが、それはまた次回のお話で。

 

 

第三話 完、第四話へ続く

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